子どもの歯並びは自然に治る?治らない理由と放置するリスクを解説
- 7月29日
- 読了時間: 11分
医療コラム執筆者
石田 明日香(大宮区役所前歯科 歯科医師)
<この記事を監修した人>
長崎大学歯学部を卒業後、東京医科歯科大学(現 東京科学大学)で臨床研修を修了。患者さまが抱える治療への不安を深く理解できるようコミュニケーションを最も大切にし、丁寧な治療を心がけています。特に、長期的な協力が必要な矯正治療、予防歯科、小児歯科において、継続的なケアでより良い治療環境を提供できるよう尽力しています。現在は日本インプラント学会および日本在宅医療連合学会に所属し、インプラントやインビザライン矯正など幅広い治療法に高い専門知識を有しています。生涯に渡る健康維持を目指し、患者さまの悩みに応じた適切な解決策を提供します。
子どもの歯並びが気になり、「成長すれば自然に治るのでは?」と考える保護者の方は少なくありません。
実際、乳歯から永久歯へ生え替わる時期に歯並びが変化することがありますが、乱れた歯並びが自然にきれいに整うケースは基本的にありません。
歯並びを放置すると、虫歯や歯周病のリスクが高まるだけでなく、噛み合わせの乱れによって将来的な健康にも影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、子どもの歯並びが自然に治るケース・治らないケースの違いや、放置するリスク、歯科医院を受診するタイミングについて詳しく解説します。

子どもの歯並びは自然に治る?
子どもの歯並びは、成長や、乳歯から永久歯への生え替わりによって見た目が変化することはありますが、乱れた歯並びが自然にきれいに整うことは基本的にありません。
一時的に前歯の隙間が目立つ時期でも、成長とともに改善するケースはあるものの、歯が重なって生えている、噛み合わせが大きくずれているといった歯並びは自然に治る可能性は低いです。
歯並びの乱れをそのままにしていると、将来的に虫歯や歯周病、噛み合わせの問題につながることもあります。気になる症状がある場合は、「成長すれば治る」と自己判断せず、早めに歯科医院で相談することが大切です。
成長の過程で変化しやすい子どもの歯並びの特徴
子どもの歯並びは基本的に自然に治るものではありませんが、成長や、乳歯から永久歯への生え替わりによって、歯並びが変化することがあります。そのため、見た目だけで異常と判断する必要がないケースもあります。
特に、永久歯が生え始める時期には、顎の成長や歯の位置の変化によって歯並びが改善することもあるため、歯科医師は年齢や発育の状況を踏まえて経過を観察していきます。
上の前歯が八の字のすきっ歯
永久歯へ生え替わる6〜8歳頃には、上の前歯が外側に開き、八の字のようなすきっ歯になることがあります。これは成長過程でよく見られる現象です。
もともと、永久歯の前歯は少し外側を向き、斜めに生えてきます。この時期は、犬歯がまだ生えておらず、一時的に隙間が目立ちますが、その後に犬歯が正しい位置へ生えてくると前歯が中央へ押され、自然に隙間が閉じるケースが多くあります。
ただし、犬歯が生え揃っても大きな隙間が残る場合や、過剰歯・上唇小帯の異常などが原因となっている場合は治療が必要になることもあるため、定期的な受診で経過を確認することが重要です。
歯の間に隙間がある
乳歯列の時期に歯と歯の間に隙間があることは、多くの場合で正常な発育の一つです。
永久歯は乳歯よりも1.5倍ほど大きいため、将来きれいに並ぶためのスペースとして必要な隙間と考えられています。代表的なものとして、霊長空隙・発育空隙・リーウェイスペースがあります。
霊長空隙(れいちょうくうげき)
霊長空隙とは、上の前歯の横(乳側切歯と乳犬歯の間)や、下の犬歯の後ろ(乳犬歯と第一乳臼歯の間)にみられる隙間のことです。永久歯は乳歯よりも幅が大きいため、この隙間があることで永久歯がスムーズに並びやすくなります。
霊長空隙は成長に伴って自然に利用されるスペースであり、乳歯列では理想的な歯並びの特徴の一つです。そのため、乳歯の時期に隙間があるからといって心配する必要はありません。
発育空隙(はついくくうげき)
発育空隙とは、顎の成長に伴って乳歯全体の間にできる隙間のことです。顎が発育することで歯列に余裕が生まれ、永久歯が生えるための十分なスペースを確保する役割があります。
反対に、乳歯が隙間なくぎっしり並んでいる場合は、永久歯が並ぶスペースが不足し、将来的に歯が重なって生える「叢生」になる可能性が高まります。乳歯の歯並びは、永久歯の歯並びを予測する目安にもなります。
リーウェイスペース
リーウェイスペースとは、乳犬歯や乳臼歯と、それらが生え替わる永久犬歯・小臼歯との大きさの違いによって生まれる余分なスペースのことです。乳歯のほうが永久歯より幅が大きいため、生え替わることで歯列にわずかな余裕ができます。
このスペースは、永久歯がきれいに並ぶための重要な役割を果たしており、軽度の歯の重なりであれば改善につながることもあります。
しかし、スペース不足が大きい場合や顎の発育が十分でない場合は、リーウェイスペースだけでは改善できず、矯正治療が必要になるケースもあります。
矯正が必要な子どもの歯並び
子どもの歯並びの中には、成長による変化が期待できるものもありますが、歯並びや噛み合わせの異常によっては自然に改善する可能性が低く、矯正治療の検討が必要なケースもあります。
乳歯列期の歯列不正を放置すると、食事や発音に支障をきたすだけでなく、虫歯や歯周病のリスクが高まったり、顎の発育に悪影響を与えたりすることがあります。
子どもの歯並びは成長を利用して改善できる場合もあるため、気になる症状があれば早めに歯科医院で相談することが大切です。
開咬
開咬とは、奥歯を噛み合わせても上下の前歯が接触せず、隙間ができる噛み合わせです。指しゃぶりや舌で前歯を押す癖、口呼吸などが原因となることが多く、自然には改善しにくいケースです。
開咬になると、前歯で食べ物を噛み切りにくくなるほか、発音が不明瞭になることがあります。また、奥歯に過度な負担がかかることで、将来的に顎関節へ影響を及ぼす可能性もあります。
癖の改善とあわせて、必要に応じて小児矯正を行うことが重要です。
過蓋咬合
過蓋咬合とは、噛み合わせたときに上の前歯が下の前歯を深く覆ってしまう噛み合わせです。顎の骨格や歯の生える位置、生活習慣などが原因となって起こります。
軽度であれば経過観察となることもありますが、重度の場合は下の前歯が上の歯ぐきを傷つけたり、顎の動きが制限されたりすることがあります。また、前歯や顎関節への負担が大きくなるため、将来的な噛み合わせのトラブルにつながることも少なくありません。
成長期に治療を始めることで、顎の発育を利用しながら改善を目指せる場合があります。
受け口
受け口は、下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせです。遺伝的な要因が強いですが、舌の癖や口周りの筋肉の使い方などが関係していることもあります。
受け口を放置すると、食べ物をうまく噛めないだけでなく、発音がしづらくなったり、顎の成長バランスが崩れたりする可能性があります。また、顔貌にコンプレックスを感じる場合もあります。
骨格の成長が進んでからでは治療の選択肢が限られることもあるため、受け口は早期に歯科医師へ相談したい歯並びの一つです。
出っ歯
出っ歯は、上の前歯や上顎が前方へ突出している状態です。遺伝のほか、指しゃぶりや口呼吸、舌を前に出す癖などが原因となることがあります。
前歯が前方へ出ていると転倒時に歯をぶつけやすく、歯が欠けたり折れたりするリスクが高くなります。また、口が閉じにくくなることで口の中が乾燥しやすくなり、虫歯や歯周病の原因にもなります。
成長期には顎の発育を利用した治療ができる場合があるため、早めに診断を受けることが大切です。
叢生
叢生は、歯が重なったり、ガタガタに並んだりしている歯並びです。顎が小さいことや永久歯が大きいことなどが主な原因で、自然に整うことはかなり少ないです。
歯が重なっている部分は歯ブラシが届きにくく、汚れがたまりやすいため、将来的に虫歯や歯周病のリスクが高くなります。また、噛み合わせが悪くなることで一部の歯に負担が集中し、歯の寿命に影響を与えることもあります。
子どものうちであれば、抜歯を極力回避し、顎の成長を利用して永久歯が並ぶスペースを確保できる場合があるため、早期の相談・治療が望ましい歯並びです。
子どもの歯並びの乱れを放置するリスク
「乳歯だからそのうち生え替わる」「成長すれば自然に治るだろう」と考え、子どもの歯並びの乱れをそのままにしてしまう方も少なくありません。
しかし、歯並びや噛み合わせの問題を放置すると、お口の健康だけでなく、全身の健康や将来の永久歯にもさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。
子どもの成長期は歯並びを改善しやすい大切な時期でもあるため、気になる症状があれば早めに歯科医院で相談することをおすすめいたします。
虫歯・歯周病のリスクが高まる
歯並びが乱れていると、歯が重なっている部分や凸凹した部分に歯ブラシが届きにくくなり、歯垢がたまりやすくなります。その結果、虫歯や歯ぐきの炎症が起こりやすくなり、将来的には歯周病のリスクも高まります。
特に子どもは歯磨きが十分にできないことも多く、歯列不正があると保護者の仕上げ磨きでも磨き残しが生じやすくなります。
乳歯の虫歯は永久歯の発育や生え替わりにも影響を及ぼすことがあるため、歯並びが原因で清掃性が悪い場合は注意が必要です。
永久歯の歯並びが乱れる可能性がある
乳歯の歯並びや噛み合わせは、永久歯が正しい位置に生えるための土台となります。
そのため、顎が小さい、歯が並ぶスペースが不足している、噛み合わせに問題があるといった状態を放置すると、永久歯もきれいに並ばず、叢生や出っ歯などの歯並びになる可能性が高まります。
また、乳歯が虫歯や外傷などで早く抜けてしまうと、周囲の歯が移動して永久歯が生えるスペースが狭くなることもあります。
永久歯が生え揃ってから矯正を行うよりも、成長期に顎の発育をコントロールしながら治療を進められるケースもあるため、早期の診断を受けてみるのが良いでしょう。
発音に影響が出る
歯並びや噛み合わせは、言葉を発音するときの舌や唇の動きにも大きく関係しています。
特に開咬や受け口、出っ歯などでは、空気が漏れやすくなったり舌の位置が安定しなかったりするため、「サ行」「タ行」「ラ行」などが発音しにくくなることがあります。
幼い頃の発音の癖がそのまま定着すると、成長後も滑舌に影響が残る可能性があります。発音だけでなく、会話への自信やコミュニケーションに影響することもあるため、歯並びが原因と考えられる場合は歯科医師へ相談するとよいでしょう。
肩こりや頭痛などの不調が起こる
噛み合わせが悪い状態が続くと、一部の歯や顎の筋肉に負担が集中し、口周りだけでなく全身にも影響を及ぼすことがあります。
食べ物を左右どちらか一方で噛む癖がついたり、顎の動きに偏りが生じたりすると、筋肉のバランスが崩れ、肩こりや首のこり、頭痛などの不調につながる場合があります。
もちろん、肩こりや頭痛にはさまざまな原因があるため、すべてが歯並びや噛み合わせによるものとは限りません。しかし、噛み合わせの異常が症状の一因となっているケースもあるため、歯並びの乱れを放置せず、早めに歯科医院で診察を受けることが大切です。
子どものうちに適切な対応を行うことで、お口だけでなく全身の健康を守ることにもつながります。
子どもの歯並びでお悩みの方は、さいたま市大宮区の大宮区役所前歯科にご相談ください
「子どもの歯並びは自然に治るのかな」「矯正が必要かどうか判断できない」とお悩みの方は、さいたま市大宮区の大宮区役所前歯科へお気軽にご相談ください。
子どもの歯並びは成長によって変化することもありますが、適切なタイミングで診断を受けることで、お子さまに合った治療方法や経過観察の方針を立てることができます。
当院では、初回の矯正相談を無料で実施しており、来院が難しい方のためにご自宅から受けられるオンライン相談にも対応しています。また、LINEから24時間ご予約いただけます。
お子さまの将来の歯並びや噛み合わせを守るためにも、少しでも気になることがあれば、お早めに大宮区役所前歯科までお問い合わせください。
